แชร์

4-20 明日香からの報告 1

ผู้เขียน: 結城 芙由奈
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-03-25 20:19:54

「あ、あの……実は……」

朱莉が京極に話そうとした時。

「あら? 朱莉さんじゃないの? 何してるのこんな所で……ってああ。そこはドッグランだったのね」

買物でもしてきたのだろうか? 全身ブランド物で身を固めた明日香がブランドのロゴマークが入った紙バックを持って立っていた。

「あ、明日香さん。こ、こんにちは」

朱莉は緊張の面持ちで明日香に挨拶をした。

「それで? 新しい飼い主は見つかったのかしら?」

明日香は朱莉の隣に京極が座っているのもお構いなしに話しかけてくる。

「え……?」

それを聞いた京極が小さく口の中で呟くのを朱莉は聞いてしまった。一気に朱莉の緊張が高まる。

(どうしよう……。私から説明する前に京極さんに犬を手放すことがばれてしまった……!)

一瞬朱莉は目を伏せ、唇をギュッと噛み締めた。そしてそんな朱莉を意地悪い笑みを浮かべて見つめる明日香。

「ところで朱莉さん。御隣にいる方はどなたかしら?」

明日香の問いかけに朱莉は一瞬ビクリと肩を震わせたが、すぐに答えた。

「あ、あの……。この方は……」

朱莉が言いかけると、京極が口を開いた。

「いえ、僕から説明しますよ。初めまして、京極正人と言います。つい最近こちらに引っ越してきました。鳴海さんとは昨日このドッグランで初めてお会いしました。偶然にも同じ犬種でして、互いの犬が仲良さげに遊んでいたので本日もこちらで一緒に遊ばせていたんです」

鳴海……ここで京極は初めて朱莉のことを苗字で呼んだ。そのことに少しだけ驚き、京極の横顔を見上げた。もしかして、京極は朱莉と明日香の張り詰めた空気に何か気付いたのだろうか? 朱莉の心臓の鼓動が早まってきた。

(どうか……どうか明日香さん……今日はもう見逃してください……!)

しかし、明日香と朱莉の2人の世界で朱莉に優しかったことは一度も無かった。

「そうですか。私は鳴海明日香と申します。彼女……朱莉さんは私の兄嫁なんですよ?」

明日香はにっこり微笑みながら京極に言った。兄嫁……今迄一度も明日香は朱莉をそんな風に呼んだこと等無かったのに、京極の前で明日香は初めてその言葉を口にしたのだった。

「!」

京極の息を飲む気配が朱莉にも感じられた。別に内緒にしていたわけでは無いが、今の自分の置かれた環境を京極に伝えるのは惨めだった。それ程親しい関係でも無かったので、敢えて言う必要などは無いだろうと
อ่านหนังสือเล่มนี้ต่อได้ฟรี
สแกนรหัสเพื่อดาวน์โหลดแอป
บทที่ถูกล็อก

บทที่เกี่ยวข้อง

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   4-21 明日香からの報告 2

     オフィスで琢磨と打ち合わせをしていた時に、デスクに置いてあった翔のスマホから着信を知らせる音楽が鳴った。2人は何気にスマホを見ると、着信相手は明日香になっていた。「明日香……?」翔は首を傾げた。「明日香ちゃんからメッセージか? 珍しいこともあるもんだな……仕事中の時間は滅多にメッセージを送って来ることは無かったのに。緊急の用事なのかもしれないから見てみろよ」「あ、ああ……。悪いな、琢磨」翔はスマホを見つめ……眉を顰めた。「どうしたんだ? 翔」「い、いや……朱莉さんが……」「何? 朱莉さんがどうかしたのか?」「億ションにあるドッグランで……若い男性と親し気に話をしていたらしい……」「何だ、別にそれ位どうってこと無いだろう?」琢磨は背もたれに寄りかかった。「だが……明日香が朱莉さんはその男性に気があるように見えたって言ってきてるんだ。相手の男性もまんざらでもなさそうだったって……」(もしそれが本当なら俺はどうすればいい? 契約書には世間の目があるから浮気は絶対にしてはならないと書いてあるが……実際は朱莉さんに何一つそんなことを言う資格は俺に無いし……)本音を言えば翔は朱莉に恋愛だって自由にさせてあげたいと心の奥底では考えていた。だが……。「……翔。何を考えているんだ?」気付けば琢磨がじっと翔を見つめていた。「明日香は世間の目があるから朱莉さんに男性と2人きりにさせるような環境を作らないように言い聞かせろとメッセージに書いてあるんだが……」翔はスマホを握りしめた。「……朱莉さんの好きにさせておけよ」琢磨がポツリと言った。「え…… ?お前……今何て……」「だから、朱莉さんの好きにさせておけと言ってるんだ。俺達に朱莉さんに契約婚の間は恋愛禁止、男性と2人きりになるなって言える立場にあるのか? 確かに書類上はお前と朱莉さんは婚姻関係にあるが実際はそんなのまやかしじゃないか。世間を偽る為の偽装夫婦だろう!? お前はいいよ、翔。大好きな明日香ちゃんと2人きりで夫婦ごっこしているんだもんなあ? だが朱莉さんはどうだ? たった1人きりであの広い億ションに住んで、今はさらにマロンとも引き放されなくちゃならない立場に追いやられてる。恋愛の一つ位……自由にさせてやるべきだと俺は思うけどな!?」いつになく強い口調で話す琢磨に翔は唖然としていた。

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-25
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   4-22 マロンの行く末とバレンタイン前夜の出来事 1

     ――16時半朱莉は母親の面会に病院に来ていた。「朱莉、今日はどうしたの? 随分元気が無いようだけど……翔さんにマフラーを渡したらとても喜んでくれたってメッセージを送ってくれたじゃない。何か辛いことでもあったの? お母さんに話してくれないのかしら?」リンゴの皮を剥いていた朱莉は顔を上げて母の顔を見た。「え……とあの……」母に話したいことなら山ほどあった。だが、そのどれもが母には……いや、母だからこそ話せないことばかりだった。(だけど……これだけは話しておかないと……)朱莉はリンゴの皮を剥き終わり、楊枝を差して母に渡した。「う、うん……実はね……マロンを手放す事になったの」「え……? ええ!? ど、どうしてなの? 何かあったの?」「あ、あの……しょ、翔さんが実は動物アレルギーを持っている事が分かって、お医者さんから手放したほうがいいって言われたから……」朱莉は考えていた言い訳を口にした。「まあ……動物アレルギーを持っていたの? それはお気の毒ね……。それで手放すことになったのね?」洋子は朱莉の手を握り締めた。「それでマロンはどうするの? もう誰か引き取り手が見つかったの?」「うん。たまたま同じマンションに住む方が同じトイ・プードルを飼っていて、その人とはドッグランで知り合ったんだけど、事情を説明したら引き取ってくれるって言ってくれたから。それにたまにはマロンに合わせてくれるって言ってくれたし」「そうなの……? でも貴女がそれで良くても……マロンの気持ちは?」母に指摘されて、朱莉はその時初めてマロンの気持ちに気が付いた。「あ……」「マロンはもうすっかり朱莉になついているのでしょう? そこを別の人に引き取られて、貴女がマロンに会いに行ったらお別れする時にマロンはすごく悲しむんじゃないの?」確かに言われてみればそうかもしれない。自分の都合で勝手にマロンを手放すのだ。マロンはもうすっかり朱莉に懐いている。そこを突然京極の手に委ねるのだ。突然変わる環境……そして元の飼い主である朱莉が気まぐれに会いに来て、連れ帰ってあげない。(これはマロンにとっては残酷なことかもしれないんだ……)「それじゃ……私はもう……マロンには会わない方がいいかもね……?」朱莉は母の前なので泣きたい気持ちをぐっとこらえる。「そうね……。貴女には酷な話しかもし

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-26
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   4-23 マロンの行く末とバレンタイン前夜の出来事 2

    ――21時「フウ……」マンションに帰宅した琢磨はネクタイを緩めると、テーブルの上にスマホを置いたとき、着信が届いている事に気付いた。着信相手は朱莉からだった。「朱莉さん……? ひょっとするとマロンの件なのか?」『こんばんは。いつもお世話になっております。明日はバレンタインですよね? 九条さんに日頃のお礼としてバレンタインプレゼントを用意させていただいたので、お渡ししたいのですが、どのように渡せばよろしいでしょうか? 住所を教えていただければ少し遅れてしまいますが郵送も考えております』「へえ……。朱莉さんが俺にもねえ……」琢磨はメッセージに目を通し、すぐに朱莉に電話を入れると3コール目で朱莉が電話に出た。『はい、もしもし』「こんばんは。九条です。今メッセージを読みました。ありがとうございます。私にバレンタインプレゼントを用意してくださったそうですね?」『はい。でもどうやってお渡しすればよいか分からなくて……すみません。メッセージを送ってしまいました』受話器越しから朱莉の戸惑った声が聞こえてきた。「あの、もしよろしければこれからプレゼントをいただきにそちらへ伺ってもよろしいですか?」『え!? い、今からですか?』「はい。実は明日は出張で東京にはいないんですよ。なので出来れば今日頂けたらなと思いまして。今から30分程で伺えますので。受け取ったらすぐに帰りますから……如何でしょうか?」『分かりました、ではお待ちしております』琢磨は電話を切ると、すぐに車のキーを取り、再び家を出た。本人は気付いてはいなかったが……その顔には笑みが浮かんでいた。30分後――琢磨が億ションの正面玄関に車を止めた時には、すでに朱莉が上着を着て外で待っていた。「あ……朱莉さん! こんな寒空の下、待っていたのですか!?」琢磨は車から降りると驚いて駆け寄った。「大丈夫ですよ。それ程長く待っていませんでしたから」朱莉は白い息を吐きながら笑顔で答え、琢磨に紙バックを手渡した。「あの……どんなのが良いか分からなくて九条さんはお酒が好きそうなイメージがあったので、アルコール入りのチョコレートを選んでみました。どうぞ受け取って下さい」「……どうもありがとうございます」琢磨は深々と頭を下げて朱莉から紙バックを受け取った。「あ、そう言えば九条さんにご報告があるんです」

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-26
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   5-1 マロンとの別れ 1

    ――2月14日「翔、知っていたか?朱莉さんがマロンの引き取り手を見つけたっていう話」琢磨は出社して来た翔に話しかけた。「いや、初耳だ。そうか、決まったのか」返事をする翔に元気は無い。「翔、本当はお前マロンのこと、可愛いと思っていたんだろう? 出来ればずっと朱莉さんに飼い主になっていて貰いたいと考えていたんじゃないのか?」「そうだな。それが朱莉さんの幸せだと思っていたから」翔は上着を脱ぎ、コートをハンガーにかけた。「朱莉さんの幸せ? マロンを飼うことだけが朱莉さんの幸せだと思っているのか?」琢磨はイライラした口調で翔に文句を言う。「琢磨……今日のお前、どうしたんだ? 何だか機嫌が悪そうに見えるぞ?」「機嫌か……。確かにあまり良くはないかもな。悪かった。お前に当たるような言い方をして」琢磨は視線を落とすとPCに再び目を向けた。(どうしたんだ? 昨夜何かあったのか? いや、それ以前に琢磨はどうやって朱莉さんからマロンの引き取り手の事を聞いたんだ?)しかし、翔は琢磨にその事を尋ねる事は無かった。元々朱莉と琢磨は自分と朱莉の連絡事項を伝達する為に個人的にメッセージのやり取りをする仲なのだから、恐らく朱莉から連絡が入ったのだろう……と自分の中で考えをまとめてしまった。その後、暫く2人は無言で仕事をこなし、部屋にはPCのキーボードを叩く音だけが響き渡った――****――午前11時朱莉はドッグランでマロンを伴い、京極と待ち合わせをしていた。朱莉の傍らにはマロン愛用のグッズがキャリーバックの中に沢山入っている。マロンはすでにドッグランの中で楽し気に走り回っていた。そんな姿を朱莉は悲し気に見つめている。その時。「お待たせいたしました、朱莉さん」背後から不意に声をかけられて振り向くと、ショコラを腕に抱いた京極が立っていた。「あ……こ、こんにちは。京極さん」朱莉は立ち上がると頭を下げ、京極の連れているショコラを見ると目を細めた。「ショコラちゃんもこんにちは」「ほら、ショコラ。マロンちゃんと遊んでおいで」京極は腕に抱いたショコラを地面に降ろすと、ショコラは嬉しそうにマロンに向かって走って行った。その様子を見ると、朱莉に声をかけた。「それでは座って話しをしませんか?」「はい」朱莉は促され、再びベンチに腰を下ろすと、京極も席を1つ分空け

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-26
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   5-2 マロンとの別れ 2

    昨日のことだった。京極は朱莉の境遇について、一切尋ねることはしなかった。ただ、尋ねたのはマロンのことについてのみだった。そこで朱莉は咄嗟に母と同じ嘘を京極についてしまったのだ。夫が実は動物アレルギーで、マロンを飼うことが出来なくなってしまったと。そして義理の妹である明日香に言われてマロンを手放さなくなってしまったことを京極に説明したのだった。京極は最後まで黙って朱莉の話を聞き終えると「それなら僕がマロンを引き取りますよ」と言ったのだった――「それでは残りの荷物の件ですが明日またドッグランでお会いしませんか? マロンを連れて行きますので、会って行けばいいじゃないですか?」京極は笑顔で言ったが、朱莉は首を振った。「いいえ……。マロンに会うのは今日で最後にします」「え? 何故ですか?」京極は信じられないと言わんばかりの目つきで朱莉を見つめる。「病気で入院している母に言われたんです。自分の都合でマロンを手放すのに、会いに行くのはあまりにも勝手な行動なのでは無いかって。マロンは嬉しいことに、すごく私に懐いてくれています。でもきっと私が突然いなくなったらすごく悲しむと思うんです。それなのに会いに行けば、きっと私の元へマロンが帰りたがると思うんです。そうしたら京極さんに迷惑をかけてしまいます。ですから……」後の台詞は言葉にならなかった。朱莉は涙が出そうになるのを必死で堪えて俯いた。「分かりました……」京極はメモ帳とペンを取り出すと、スラスラと何かを書いて朱莉に手渡してきた。「これをどうぞ」「あの……これは……?」朱莉はメモ紙を受け取ると尋ねた。「これは僕の自宅の部屋番号です。在宅勤務で殆ど自宅にいますのでいつでもマロンの荷物を運んできていただいて大丈夫ですよ。あ、でも来る前に一度連絡を入れて貰ったほうがいいかな? 僕は部屋の中でもサークルに入れないで放し飼いをしているので、貴女の匂いに気付いてマロンが飛び出して来るかもしれないですからね。玄関の外で荷物を受け取りますよ」「はい、何から何までありがとうございます。それではマロンをよろしくお願いします」朱莉は立ち上がった。「朱莉さん。最後に……マロンを抱いていかなくていいんですか?」「いいんです……。だ、だって……マロンを抱いてしまったら別れがたくなってしまうから……」朱莉は泣くのを必死で堪え

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-26
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   5-3 名古屋出張時の会話 1

    ――13時 あの後、琢磨と翔は新幹線に乗って名古屋にある支社に出張に来ていた。昼休憩を取る為にオフィスの外に出て、カレー専門店のキッチンカーに並んでいた琢磨のスマホに着信を知らせる音楽が鳴った。着信相手は朱莉からだった。(何だろう……? でも丁度昨夜のバレンタインのお礼も言いたかったし、食事が済んだらメッセージを送ってみよう)丁度その時、琢磨の番が回ってきた。「いらっしゃいませ。何にいたしますか?」店主がにこやかに声をかけてきた。琢磨はメニュー表をじっと見つめ……2人分のカレーを注文したのだった……。****「おい、翔。昼飯買って来たぞ」琢磨が2人分の食事を持って、2人の専用オフィスルームに戻って来た。「ああ、悪かったな、琢磨。今コーヒーを淹れるよ」翔は最近各オフィスに導入したばかりのコーヒーマシンがお気に入りで、度々利用していた。「琢磨、お前は何にするんだ?」「う~ん……そうだな。アメリカンにしてくれ」「へえ、珍しいな、いつもならもっと濃い味を好んでいるのに」翔は琢磨を振り返る。「まぁな、今日はカレーにしたんだよ」「へえ~どうりでスパイシーな香りがすると思った。いいじゃないか」「だろう? たまたまビルの外にキッチンカーが来ていたんだよ」「それじゃ俺もアメリカンにするか」翔は2人分のコーヒーを淹れるとテーブルに運んできた。「シーフードカレーとチキンカレーを買って来たが……お前はどっちがいい?」琢磨は2種類のカレーを翔に見せた。「それじゃ、シーフードカレーにするかな」「分かった。それじゃ俺はチキンだな」翔にシーフードカレーを渡すと、琢磨はコーヒーを飲んで笑みを浮かべる。「うん。やっぱりコーヒーマシンを導入して正解だったよ」「ああ。社員達にも好評らしいようだしな」翔はカレーを一口食べた。「美味いな」「ああ。こっちも美味いぜ?」美味しそうにカレーを食べている琢磨の姿を見ながら翔は尋ねた。「琢磨。実は朱莉さんのことなんだが……」「そう言えば、さっき朱莉さんからメッセージが入っていたな。食事が済んだら返信しようと思っていたんだ。丁度昨夜の礼も言いたかったし」「昨夜の礼……?」翔は首を傾げた。「ああ、実は昨夜朱莉さんからメッセージを貰ったんだ。俺にもバレンタインプレゼントを用意してくれたらしくて。今日は

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-27
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   5-4 名古屋出張時の会話 2

    (明日香……今夜は自宅に一人ぼっちにさせてしまうことになるが、大丈夫だろうか……?)「どうした、翔? ボーッとして」いカレーを食べ終わっていた琢磨は翔に声をかけてきた。「い、いや……。今夜明日香はあの広い部屋に一人ぼっちですごさなければならないから、大丈夫か心配で……って……な、何だよ琢磨。その目つきは……」いつの間にか琢磨は翔を睨み付けていた。「お前なあ……それを言うなら朱莉さんはどうなんだよ? お前と去年の5月に契約婚を結んで、今はもう2月だ。どれだけあの広い部屋で1日中1人で過ごしてきたのか分かってるのか? それを、俺達は最高で後5年間は朱莉さんにその生活を強いる訳なんだぞ? 明日香ちゃんのことばかりじゃなく、たまには朱莉さんにもその気遣いをみせたらどうなんだ? 時には様子を見に行ってあげたりとか……って今更お前に何を言っても仕方が無いか」琢磨は深いため息をついた。「悪いが、俺は明日香の事で手一杯なんだ。朱莉さんのことまでは気にかけてやれない。だからそれなりに彼女には毎月お金を支払っている訳だし……。そうだ、琢磨。お前が時々様子を見に行ってやれないか? 例えば週に1度とか……」その話を聞かされた琢磨の顔色が変わった。「はあ? 何言ってるんだ? それこそお門違いだろう? 大体書類上とは言え、お前と朱莉さんは正式な夫婦なんだから。そこへどうして俺が朱莉さんの所へ顔を出せる? 年に数回とかならまだしも、しょっちゅう顔を出して仮にマスコミに知れたらどうするんだ? これが他の男なら話は別だが、俺はお前の秘書なんだからな? あらぬ噂を立てられて面白おかしく騒がれたらたまったものじゃない。だから翔。俺は朱莉さんに土産を買って来るから、お前から朱莉さんに俺からの土産だと言って渡しておいてくれよ」それだけ言い残すと琢磨はダストボックスに食べ終えたトレーを捨てると上着を着た。「琢磨、何処へ行くんだ?」「まだ昼休憩が終わるまで30分あるだろう? 駅の周辺の土産物屋に行って来る」そう告げると、琢磨は足早にオフィスを出て行った。その後姿を見送ると翔は深いため息をつくのだった—―****丁度その頃――朱莉は京極の部屋の前に立っていた。手にはマロンのペットフードや食器、シャンプー剤などが入った帆布の袋がぶら下げられている。緊張しながらも朱莉はインターホンを

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-27
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   5-5 女二人のお祝いの席で 1

     朱莉が自宅へ戻ると、何と玄関前に明日香が立っており、危うく朱莉は悲鳴を上げそうになった。「何よ。人のことをそんなに驚いた顔で見て。それより朱莉さん。今まで何処に行ってたのよ」明日香は機嫌が悪そうに腕組みをしている。(どうしよう……)一瞬朱莉は迷ったがここで変に隠し立てして後で明日香に真実がばれる位なら、今ここで全て白状した方が良いだろうと朱莉は判断し、正直に話す事にした。「あ、あの明日香さん。実は犬の引き取り手が決まったんです。それでその方の自宅にペットフードやエサ入れ等を届けてきたところなんです」すると明日香が目を輝かせた。「あら、朱莉さん。早速犬の引き取り手を見つけてきたのね? ということはもうあの犬はここにはいないのよね?」「は、はい。もういません」明日香の笑みに心を傷付けられながらも朱莉は返事をした。「そう、言われたことをすぐに実行に移す人は嫌いじゃないわよ。それで……」チラリと明日香は朱莉を見ると言った。「お茶の一杯くらいは入れて貰えるかしら?」「はい。気が付かず申し訳ございません」慌てて朱莉は鍵を開けると、明日香を招き入れた。明日香は部屋に上がり込むと、ジロジロと部屋中を見渡す。「ほんとに相変わらず何も無いシンプルな部屋よね……。これならいつでもすぐにこの部屋から出て行けそうよね?」意味深な明日香の言葉に思わずお茶の準備をしていた朱莉の手が止まる。「いやあね~冗談に決まってるでしょう? これから貴女にはまだまだ役立ってもらわないとならないのだから」またもや明日香の口から意味深な言葉が飛び出し、朱莉の心臓の動悸が早まってきた。(何だか怖い……明日香さん…何か私に依頼することでもあるのかな……?)朱莉は震えそうになる手を必死に抑え、コーヒーを淹れてテーブルの前に置いた。すると明日香が露骨に嫌そうな顔をする。「ねえ。朱莉さん……私今、カフェインは口にしないようにしてるのよ。ハーブティーは無いのかしら?」眉をしかめながら明日香が文句を言って来た。「あ……す、すみません。今度用意しておきます……」慌てて朱莉は頭を下げた。「そうね。出来ればカモミールかローズヒップを用意しておいてくれるかしら? 忘れないでよ?」朱莉は足を組んでブラブラさせながら言った。「はい、必ず用意しておきます」すると明日香が突然立ち上が

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-27

บทล่าสุด

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-20 翔の隠し事 2

    「翔さん、落ち着いて下さい。医者の話では出産と過呼吸のショックで一時的に記憶が抜け落ちただけかもしれないと言っていたではありませんか。それに対処法としてむやみに記憶を呼び起こそうとする行為もしてはいけないと言われましたよね?」「ああ……だから俺は何も言わず我慢しているんだ……」「翔さん。取りあえず今は待つしかありません。時がやがて解決へ導いてくれる事を信じるしかありません」やがて、2人は一つの部屋の前で足を止めた。この部屋に明日香の目を胡麻化す為に臨時で雇った蓮の母親役の日本人女子大生と、日本人ベビーシッター。そして生れて間もない蓮が宿泊している。 翔は深呼吸すると、部屋のドアをノックした。すると、程なくしてドアが開かれ、ベビーシッターの女性が現れた。「鳴海様、お待ちしておりました」「蓮の様子はどうだい?」「良くお休みになられていますよ。どうぞ中へお入りください」促されて翔と姫宮は部屋の中へ入ると、そこには翔が雇った蓮の母親役の女子大生がいない。「ん? 例の女子大生は何処へ行ったんだ?」するとシッターの女性が説明した。「彼女は買い物へ行きましたよ。アメリカ土産を持って東京へ戻ると言って、買い物に出かけられました。それにしても随分派手な母親役を選びましたね?」「仕方なかったのです。急な話でしたから。それより蓮君はどちらにいるのですか?」姫宮はシッターの女性の言葉を気にもせず、尋ねた。「ええ。こちらで良く眠っておられますよ」案内されたベビーベッドには生後9日目の新生児が眠っている。「まあ……何て可愛いのでしょう」姫宮は頬を染めて蓮を見つめている。「あ、ああ……。確かに可愛いな……」翔は蓮を見ながら思った。(目元と口元は特に明日香に似ているな)「残念だったよ、起きていれば抱き上げることが出来たんだけどな。帰国するともうそれもかなわなくなる」すると姫宮が言った。「いえ、そんなことはありません。帰国した後は朱莉さんの元へ会いに行けばいいのですから」「え? 姫宮さん?」翔が怪訝そうな顔を見せると、姫宮は、一種焦った顔をみせた。「いえ、何でもありません。今の話は忘れてください」「あ、ああ……。それじゃ蓮の事をよろしく頼む」翔がシッターの女性に言うと、彼女は驚いた顔を見せた。「え? もう行かれるのですか?」「ああ。実はこ

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-19 翔の隠し事 1

     アメリカ—— 明日いよいよ翔たちは日本へ帰国する。翔は自分が滞在しているホテルに明日香を連れ帰り、荷造りの準備をしていた。その一方、未だに自分が27歳の女性だと言うことを信用しない明日香は鏡の前に座り、イライラしながら自分の顔を眺めている。「全く……どういうことなの? こんなに自分の顔が老けてしまったなんて……」それを聞いた翔は声をかける。「何言ってるんだ、明日香。お前はちっとも老けていないよ。いつもどおりに綺麗な明日香だ」すると……。「ちょっと! 何言ってるのよ、翔! 自分迄老け込んで、とうとう頭もやられてしまったんじゃないの? 今迄そんなこと私に言ったこと無かったじゃない。大体おかしいわよ? 私が病院で目を覚ました時から妙にベタベタしてくるし……気味が悪いわ。もしかして私に気があるの? 言っておくけど仮にも血が繋がらなくたって私と翔は兄と妹って立場なんだから! 私に対して変な気を絶対に起こさないでね!?」明日香は自分の身体を守るように抱きかかえ、翔を睨み付けた。「あ、ああ。勿論だ、明日香。俺とお前は兄と妹なんだから……そんなことあるはず無いだろう?」苦笑する翔。「ふ~ん……翔の言葉、信用してもいいのね?」「ああ、勿論さ」「だったらこの部屋は私1人で借りるからね! 翔は別の部屋を借りてきてちょうだい。 あ、でも姫宮さんは別にいて貰っても構わないけど?」明日香は部屋で書類を眺めていた姫宮に声をかける。「はい、ありがとうございます」姫宮は明日香に丁寧に挨拶をした。「それでは翔さん、別の部屋の宿泊手続きを取りにフロントへ御一緒させていただきます。明日香さん。明日は日本へ帰国されるので今はお身体をお安め下さい」姫宮は一礼すると、翔に声をかけた。「それでは参りましょう。翔さん」「あ、ああ。そうだな。それじゃ明日香、まだ本調子じゃないんだからゆっくり休んでるんだぞ?」部屋を出る際に翔は明日香に声をかけた。「大丈夫、分かってるわよ。自分でも何だかおかしいと思ってるのよ。急に老け込んでしまったし……大体私は何で病院にいたの? 交通事故? それとも大病? そうでなければ身体があんな風になるはず無いもの……」明日香は頭を押さえながらブツブツ呟く「ならベッドで横になっていた方がいいな」「そうね……。そうさせて貰うわ」返事をすると

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-18 雨の中の再会 2

     琢磨に礼を言われ、朱莉は恐縮した。「い、いえ。お礼を言われるほどのことはしていませんから」「朱莉さん、そろそろ17時になる。折角だから何処かで食事でもして帰らないかい?」「あ、それならもし九条さんさえよろしければ、うちに来ませんか? あまり大した食事はご用意出来ないかもしれませんが、なにか作りますよ?」朱莉の提案に琢磨は目を輝かせた。「え?いいのかい?」「はい、勿論です。あ……でもそれだと九条さんの相手の女性の方に悪いかもしれませんね……」「え?」その言葉に、一瞬琢磨は固まる。(い、今……朱莉さん何て言ったんだ……?)「朱莉さん……ひょっとして俺に彼女でもいると思ってるのかい?」琢磨はコーヒーカップを置いた。「え? いらっしゃらないんですか?」朱莉は不思議そうに首を傾げた。「い、いや。普通に考えてみれば彼女がいる男が別の女性を食事に誘ったり、こうして買い物について来るような真似はしないと思わないかい?」「言われてみれば確かにそうですね。変なことを言ってすみませんでした」朱莉が照れたように謝るので琢磨は真剣な顔で尋ねた。「朱莉さん、何故俺に彼女がいると思ったの?」「え? それは九条さんが素敵な男性だからです。普通誰でも恋人がいると思うのでは無いですか?」「あ、朱莉さん……」(そんな風に言ってくれるってことは……朱莉さんも俺のことをそう言う目で見てくれているってことなんだよな? だが……これは喜ぶべきことなのだろうか……?)琢磨は複雑な心境でカフェ・ラテを飲む朱莉を見つめた。すると琢磨の視線に気づく朱莉。「九条さんは何か好き嫌いとかはありますか?」「いや、俺は好き嫌いは無いよ。何でも食べるから大丈夫だよ」それを聞いた朱莉は嬉しそうに笑った。「九条さんも好き嫌い無いんですね。航君みたい……」その名前を琢磨は聞き逃さなかった。「航君?」「あ、いけない! すみません、九条さん、変なことを言ってしまいました。そ、それじゃもう行きませんか?」朱莉は慌てて、まるで胡麻化すように席を立ちあがった。「あ、ああ。そうだね。行こうか?」琢磨も何事も無かったかの様に立ち上がったが、心は穏やかでは無かった。(航君……? 一体誰のことなんだろう? まさかその人物が朱莉さんと沖縄で同居していた男なのか?それにしても君付けで呼ぶなん

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-17 雨の中の再会 1

     14時―― 朱莉がエントランス前に行くと、すでに琢磨が億ションの前に車を停めて待っていた。「お待たせしてすみません。九条さん、もういらしてたんですね」朱莉は慌てて頭を下げた。「いや、そんなことはないよ。だってまだ約束時間の5分以上前だからね」琢磨は笑顔で答えた。本当はまた今日も朱莉に会えるのが嬉しくて、今から15分以上も前にここに到着していたことは朱莉には内緒である。「それじゃ、乗って。朱莉さん」琢磨は助手席のドアを開けた。「はい、ありがとうございます」朱莉が助手席に座ると、琢磨も乗り込んだ。シートベルトを締めてハンドルを握ると早速朱莉に尋ねた。「朱莉さんは何処へ行こうとしていたんだっけ?」「はい。赤ちゃんの為に何か素敵なCDでも買いに行こうと思っていたんです。それとまだ買い足したいベビー用品もあるんです」「よし、それじゃ大型店舗のある店へ行ってみよう」「はい、お願いします」琢磨はアクセルを踏んだ――**** それから約3時間後――朱莉の買い物全てが終了し、車に荷物を積み込んだ2人はカフェでコーヒーを飲みに来ていた。「思った以上に買い物に時間がかかってしまったね」「すみません。九条さん……私のせいで」朱莉が申し訳なさそうに頭を下げた。「い、いや。そう意味で言ったんじゃないんだ。まさか粉ミルクだけでもあんなに色々な種類があるとは思わなかったんだよ」「本当ですね。取りあえず、どんなのが良いか分からなくて何種類も買ってしまいましたけど口に合う、合わないってあるんでしょうかね?」「う~ん……どうなんだろう。俺にはさっぱり分からないなあ……」琢磨は珈琲を口にした。「そう言えば、すっかり忘れていましたけど、九条さんの会社はインターネット通販会社でしたね?」「い、いや。俺の会社と言われると少し御幣を感じるけど……まあそうだね」「当然ベビー用品も扱っていますよね?」「うん、そうだね」「それでは今度からはベビー用品は九条さんの会社で利用させていただきます」「ありがとう。確かに新生児がいると母親は買い物も中々自由に行く事が難しいかもね。……よし、今度の企画会議でベビー用品のコンテンツをもっと広げるように提案してみるか……」琢磨は仕事モードの顔に変わる。「ついでに赤ちゃん用の音楽CDもあるといいですね。出来れば視聴も試せ

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-16 帰国の知らせ 2

     朝食を食べ終わり、片付けをしていると今度は朱莉の個人用スマホに電話がかかってきた。それは琢磨からであった。昨夜琢磨と互いのプライベートな電話番号とメールアドレスを交換したのである。「はい、もしもし」『おはよう、朱莉さん。翔から何か連絡はあったかい?』「はい、ありました。突然ですけど明日帰国してくるそうですね」『ああ、そうなんだ。俺の所にもそう言って来たよ。それで明日香ちゃんの為に俺にも空港に来てくれと言ってきたんだ。……当然朱莉さんは行くんだろう?』「はい、勿論行きます」『車で行くんだよね?』「はい、九条さんも車で行くのですね」『それが聞いてくれよ。翔から言われたんだ。車で来て欲しいけど、俺に運転しないでくれと言ってるんだ。仕方ないから帰りだけ代行運転手を頼んだんだよ。全く……いつまでも俺のことを自分の秘書扱いして……!』苦々し気に言う琢磨。それを聞いて朱莉は思った。(だけど九条さんも人がいいのよね。何だかんだ言っても、いつも翔先輩の言うことを聞いてあげているんだから)朱莉の思う通り、琢磨自身が未だに自分が翔の秘書の様な感覚が抜けきっていないのも事実である。それ故、多少無理難題を押し付けられても、つい言いなりになってしまうことに琢磨自身は気が付いていなかった。「でも、どうしてなんでしょうね? 九条さんに運転をさせないなんて」朱莉は不思議に思って尋ねた。『それはね、全て明日香ちゃんの為さ。明日香ちゃんは自分がまだ高校2年生だと思っているんだ。その状態で俺が車を運転する訳にはいかないんだろう。全く……せめて明日香ちゃんが自分のことを高3だと思ってくれていれば、在学中に免許を取ったと説明して運転出来たのに……』琢磨のその話がおかしくて、朱莉はクスリと笑ってしまった。「でもその場に私が現れたら、きっと変に思われますよね? 明日香さんには私のこと何て説明しているのでしょう?」『……』何故かそこで一度琢磨の声が途切れた。「どうしたのですか? 九条さん」『朱莉さん……君は何も聞かされていないのかい?』「え……?」『くそ! 翔の奴め……いつもいつも肝心なことを朱莉さんに説明しないで……!』「え? どういうことですか?」(何だろう……何か嫌な胸騒ぎがする)『俺も今朝聞いたばかりなんだよ。翔は現地で臨時にアルバイトとして女子大生と

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-15 帰国の知らせ 1

    「それじゃ、朱莉さん。次は翔から何か言ってくるかもしれないけど、くれぐれもアイツの滅茶苦茶な要求には答えたら駄目だからな?」タクシーに乗り込む直前の朱莉に琢磨は念を押した。「九条さんは随分心配性なんですね。私なら大丈夫ですから」朱莉は笑みを浮かべた。「もし翔から契約内容を変更したいと言ってきたら……そうだな。まずは俺に相談してから決めると返事をすればいい」するとタクシー運転手が話しかけてきた。「すみません。後が詰まってるので……出発させて貰いたいのですが……」「あ! すみません!」琢磨は慌ててタクシーから離れると、朱莉が乗り込んだ。車内で朱莉が琢磨に頭を下げる姿が見えたので、琢磨は手を振るとタクシーは走り去って行った。「ふう……」タクシーの後姿を見届けると、琢磨はスマホを取り出して、電話をかけた。「もしもし……はい。そうです。今別れた所です。……ええ。きちんと伝えましたよ。……後はお任せします。え? ……いいのかって? ……あなたなら何とかしてくれるでしょう? それだけの力があるのですから。……失礼します」そして電話を切ると、夜空を見上げた。「雨になりそうだな……」**** 翌朝――6時朱莉はベッドの中で目を覚ました。昨夜は琢磨から聞いた翔の伝言で頭がいっぱいで、まともに眠ることが出来なかった。寝不足でぼんやりする頭で起きて、着替えをするとカーテンを開けた。「あ……雨……。どうりで薄暗いと思った……」今日は朱莉の車が沖縄から届く日になっている。車が届いたら朱莉は新生児に効かせる為のCDを買いに行こうと思っていた。これから複雑な環境の中で育っていく子供だ。せめて綺麗な音楽に触れて、情操教育を養ってあげたいと朱莉は考えていた。洗濯物を回しながら朝食の準備をしていると、翔との連絡用のスマホに着信を知らせる音楽が鳴った。(まさか、翔先輩!?)朱莉はすぐに料理の手を止め、スマホを見るとやはり翔からのメッセージだった。今朝は一体どんな内容が書かれているのだろう? 翔からの連絡は嬉しさの反面、怖さも感じる。好きな人からの連絡なのだから嬉しい気持ちは確かにあるのだが問題はその中身である。大抵翔からのメールは朱莉の心を深く傷つける内容が殆どを占めている。(やっぱり契約内容の変更についてなのかなあ……)朱莉はスマホをタップした。『おは

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-14 翔の新たな要求 2

    「本当はこんなこと、朱莉さんに言いたくは無かった。だが翔が仮に今の話を直接朱莉さんに話したとしたら? 恐らく翔のことだ。きっと再び朱莉さんを傷付けるような言い方をして、挙句の果てに、これは命令だとか、ビジネスだ等と言って強引に再契約を結ばせるつもりに違いない。だがそんなこと、絶対に俺はさせない。無期限に朱莉さんを縛り付けるなんて絶対にあってはいけないんだ」琢磨は顔を歪めた。(え……無期限に明日香さんの子供の面倒を? それってつまり偽装婚も無期限ってこと……?)なので朱莉は琢磨に尋ねた。「あの……それってつまり翔さんは私との偽装結婚を無期限にする……ということでもあるのですよね?」(そうしたら、私……もう少しだけ翔先輩と関わっていけるってことなのかな?)しかし、次の瞬間朱莉の淡い期待は打ち砕かれることになる。「いや、翔の言いたいことはそうじゃないんだ。当初の予定通り偽装婚は残り3年半だけども子育てに関しては明日香ちゃんが記憶を取り戻すまで続けて貰いたいってことなんだよ」「え……?」「つまり、翔は3年半後には契約通りに朱莉さんと離婚して、子供だけは朱莉さんに引き続き面倒を見させる。しかも明日香ちゃんが記憶を取り戻すまで、無期限にだ。こんな虫のいい話あり得ると思うかい?」「……」朱莉はすっかり気落ちしてしまった。(やっぱり……ほんの少しでも翔先輩から愛情を分けて貰うのは所詮叶わないことなの? でも……)「九条さん」朱莉は顔を上げた。「何だい」「私、明日香さんと翔さんの赤ちゃんを今からお迎えするの、本当に楽しみにしてるんです。例え自分が産んだ子供で無くても、可愛い赤ちゃんとあの部屋で一緒に暮らすことが待ちきれなくて……」「朱莉さん……」「九条さん。もし、子供が3歳になっても明日香さんが記憶を取り戻せなかった場合は、翔さんは私に引き続き子供を育てて欲しいって言ってるわけですよね? それって……翔さんは記憶の戻っていない明日香さんにお子さんを会わせてしまった場合、お互いにとって精神面に悪影響が出るのではと苦慮して私に預かって貰いたいと思っているのではないでしょうか? だって、考えても見てください。ただでさえ10年分の記憶が抜けて自分は高校生だと信じて疑わない明日香さんに貴女の産んだ子供ですと言って対面させた場合、明日香さんが正常でいられると

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-13 翔の新たな要求 1

     明日香が10年分の記憶を失い、高校生だと思い込んでいる話は朱莉にとってあまりにもショッキングな話であった。「朱莉さん、大丈夫かい? 顔色が真っ青だ」「は、はい。大丈夫です。でもそうなると今一番大変なのは翔先輩ではありませんか?」朱莉は翔のことが心配でならなかった。あれ程明日香を溺愛しているのだ。17歳の時、翔と明日香は交際していたのだろうか? ただ、少なくとも朱莉が入学した当時の2人は交際しているように見えた。「朱莉さん、翔が心配かい?」琢磨が少し悲し気な表情で尋ねてきた。「はい、とても心配です。勿論一番心配なのは明日香さんですけど」「やっぱり朱莉さんは優しい人なんだね」(あの2人に今迄散々蔑ろにされてきたのに……それらを全て許して今は2人をこんなに気に掛けて……)「何故翔さんは九条さんに連絡を入れてきたのですか? それに、どうして九条さんから私に説明することになったのでしょう?」朱莉は琢磨の瞳をじっと見つめた。「俺も、2日前に翔から突然メッセージが届いたんだよ。あの時は驚いた。翔と決別した時に、アイツはこう言ったんだよ。互いに二度と連絡を取り合うのをやめにしようと。こちらとしてはそんなつもりは最初から無かったけど、翔がそこまで言うのならと思って自分から二度と連絡するつもりは無かったんだ。それなのに突然……」そして、琢磨は近くを通りかかった店員に追加でマティーニを注文すると朱莉に尋ねた。「朱莉さんはどうする?」「それでは私はアルコール度数が低めのお酒で」「それなら、『ミモザ』なんてどうかな? シャンパンをオレンジジュースで割った飲み物だよ。アルコール度数も8度前後で、他のカクテルに比べると度数が低い」琢磨はメニュー表を見ながら朱莉に言った。「はい、ではそちらを頂きます」「かしこまりました」店員は頭を下げると、その場を立ち去っていく。すると琢磨が再び口を開いた。「明日香ちゃんは自分を高校生だと思い込んでいるから、当然翔の隣にはいつも俺がいるものだと思い込んでいるらしいんだ。考えてみればあの頃の俺達はずっと3人で一緒に高校生活を過ごしてきたようなものだからね。それで明日香ちゃんが目を覚ました時、翔に俺のことを聞いてきたらしい。『琢磨は何処にいるの?』って。それで一計を案じた翔が明日香ちゃんを安心させる為に、もう一度3人で会いた

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-12 重大な話 2

    「九条さんが【ラージウェアハウス】の新社長に就任した話はニュースで知ったんです。あの時九条さん言ってましたよね? 鳴海グループにも負けない程のブランド企業にするって」「ああ、あの話か……。あれは……まあもう1人の社長にああいうふうに言えって半ば命令されたからさ。自分の意思で言った訳じゃ無いが正直、気分は良かったな」琢磨は笑みを浮かべる。「あの翔に一泡吹かせることが出来たみたいだし。初めはテレビインタビューなんて御免だと思ったけどね。大分、翔の奴は慌てたらしい」朱莉もカクテルを飲むと琢磨を見た。「え? その話は誰から聞いたんですか?」「会長だよ」琢磨の意外な答えに朱莉は驚いた。「九条さんは会長と個人的に連絡を取り合っていたのですか?」「ああ、そうだよ。実は以前から会長に秘書にならないかと誘われていたんだ。でも俺は翔の秘書だったから断っていたんだけどね」「そうだったんですか」あまりにも驚く話ばかりで朱莉の頭はついていくのがやっとだった。「それにしても朱莉さんも随分雰囲気が変わったよね? 前よりは積極的になったようだし、お酒も飲めるようになってきた。……ひょっとして沖縄で何かあったのかい?」琢磨の質問に朱莉は一瞬迷ったが、決めた。(九条さんだって話をしてくれたのだから、私も航君のこと、話さなくちゃ)「実は……」朱莉は沖縄での航との出会い、そして別れまでを話した。もっとも名前を明かす事はしなかったが。一方の琢磨は朱莉の話を呆然と聞いていた。(まさか朱莉さんが男と同居していたなんて。しかもあんなに頬を染めて嬉しそうに話してくるってことは……その男、朱莉さんに取って特別な存在だったのか?)朱莉が沖縄で男性と同居をしていた……その事実はあまりに衝撃的で、琢磨の心を大きく揺さぶった。「それでその彼とは東京へ戻ってからは音信不通……ってことなのかい?」内心の動揺を隠しながら琢磨は尋ねた。「はい。そうです。だから条さんとは連絡が取れて嬉しかったです。ありがとうございました」お酒でうっすら赤く染まった頬ではにかみながら琢磨にお礼を言う朱莉の姿は琢磨の心を大きく揺さぶった。「そ、そんな笑顔で喜んでくれるなんて思いもしなかったよ。でも……そうか。朱莉さんが以前よりお酒を飲めるようになったのはその彼のお陰なんだね?」「そうですね……。きっとそう

สำรวจและอ่านนวนิยายดีๆ ได้ฟรี
เข้าถึงนวนิยายดีๆ จำนวนมากได้ฟรีบนแอป GoodNovel ดาวน์โหลดหนังสือที่คุณชอบและอ่านได้ทุกที่ทุกเวลา
อ่านหนังสือฟรีบนแอป
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status